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2012年2月19日 (日)

逝きし世の面影【渡辺京二:平凡社ライブラリー】

Ikishi

元々は江戸時代の日本,特に一般庶民の生活に興味があって購入したが,いろんな意味でこれは名著だ。

江戸期・幕末・明治初期の日本に関する書物,記録はいろいろ出版されている。その中でも,日本に滞在した外国人から見た日本の記録から,当時の日本の姿が浮かび上がってくる。

本書は,彼らが残した膨大な量の資料や書簡を丁寧に分析して,様々な角度から当時の日本人の生活を描き出してくれる。とにかく渡辺氏の文章力がかなりに高く,なおかつバイアスのない表現に徹しているのでとても安心して読めるので,「それはこじつけでは・・・」という部分がほとんどない。

もちろん,渡辺氏がもつ当時の日本への思い,俗な言葉で言うとノスタルジアは語られてはいるが,資料となる書簡や日記,記録などの分析が冷静であり,単なる精神論だけで語られていなのがとても好感が持てる。

記録を残している外国人にもいろいろなタイプがある。日本に対して好感を持って居住したものもいれば,最初から東洋文明に対して嫌悪感や軽蔑を持って入国したものもいる。当時の日本人が特に膚色の違う外国人をどれほど珍奇な視線で見つめ,失礼を働いたかは容易に想像できよう。本書は日本人と外国人の基本的バイアスに関しても言及しながら,当時(主に1800年代)の我々日本人の生活がどういったものであったのかを浮かび上がらせてくれている。

当たり前のことだが,当時の外国人も,同じ事象・都市・地域を見ても,感じ方は全く違ったのである。渡辺氏はその違いや原因にまで言及してくれている。筆者渡辺氏の素晴らしい筆力だけでなく,これらの冷静さが読む人間に最後まで安心感をもたらしてくれるのだ。

ラフカディオ・ハーンやイザベラ・バードの名前は聞いたことがある,という人も多いかもしれない。この2人を入門として,本書に親しみ,気になった人物の資料を紐解いていくとおもしろいだろう。ちなみに,『怪談』のように,迷信めいた部分を文学的に後世に残したハーンの日本人観というもは,一般的なものではなく特殊かもしれない。冷静に当時の記録を残すということはやはり難しいので,その意味ではゴードン・スミスの写真や,絵心のある人物が残したスケッチの方が冷静に真実を伝えることとなるのかもしれない。

政治体制や維新に関しての知識を得るには本書は適切ではない。しかし主に幕末から明治期の日本の生活がどうであったのかを少しでも知りたければ,本書は適切な選択である。

ただし600ページ近くと,なり分量があるので読破するにはそれなりの覚悟が必要だ。

農村の地域による貧富の差,江戸地方や長崎などの民の暮らし,武士階級の現実などを感じることができるし,生活がどのようにその後変わっていったかも分かる。決して鎖国の終焉を境にして急に変革を遂げたのではなく,実際にはグラデーションのように変化をしていったのだ。

読後の感想は,本書を読んだ目的によりそれぞれであろう。

ノスタルジックに感傷に浸るのもいいが,読むほどに別の感覚になる。

『古きよき日本』は消滅してしまった,と。

いやそんなことはない,祭りや習俗としてたくさん今でも引き継がれているではないかと言う方も多いだろう。それは形として継承されているのであって,当時の日本居住外国人たちが見聞した,佳き日の日本人精神はすでに消滅してしまった気がしてならない,というのが私の実感だ。

特に明治を境になぜ我々は自分たちの姿を『悪しきもの』として否定し,捨てさってしまったのか。

何故,第2次世界大戦の敗戦を期にあれほどまでにGHQの要求に屈し,現代にも繋がるアメリカの属国化への道を歩んだのか。

日本人が日本人論を好むのも,自らを否定する手段としてであるような気がしてきた。

私は右や左の思想的偏向はあまりない方だと信じているが,あの『逝ってしまった佳き日本』を取り戻したい,日本人であることを暖かく心に秘めたいという想いが強くなった。

全く別の話になるが本書を読み終わったあと,当時の日本人精神構造や生活様式に中東やイスラムに通じるものを感じだしたのだが,いかがだろう。

イスラムに関するものを少し読み始めたところだ。

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